サラリーマンのような会社員でも給料が上がらない、物価が上がっているから実質使えるお金が減っている、そんな方は節税をすることで手元のお金を増やすことができます。
しかし、節税といえば経営者のためのテクニックや難しい知識が必要と考えている方も少なくありません。
そこで今回は、会社員でもできる節税のテクニックを紹介し、応用的な特定支出控除についても解説します。
所得税の仕組みを知ることが節税の近道
所得税の仕組みを知ることが節税への近道と言えます。
ここでは、次の2つについて解説していきましょう。
- 所得税の基本的な構造
- 会社員の節税対象
所得税といえば、給料から自動でひかれている税金というイメージしかないという方も多いのではないでしょうか。
所得税とは、一言で言えば1年間の全収入から計算して税金額を決定し、会社員一人ひとりに課税する税金です。
ただ、全額を課税対象としてしまうと大変な金額の税金になってしまうため、収入の一部を控除という形で差し引き、その残りの金額(課税所得)に対して課税をするのが基本的な仕組みです。
厳密に言えば、税額控除なども入ってくるのですが、ここでは全収入から控除を引いた金額に税率をかけた金額が所得税と知っておくとよいでしょう。
ちなみに、住民税ともいわれる地方税も地域によって厳密には異なりますが、基本的な構造は同じです。
以上のように、控除をたくさん増やせば増やすほど、支払う税金が安くなる仕組みです。
つまり、会社員でもできる節税対策は、利用できる控除を増やすことが基本となります。
会社員の節税対象は、今解説した通り控除をコントロールすることになります。
具体的には所得控除と税額控除の2つを増やすことがポイントです。
所得控除とは、課税対象となる金額を減らせる控除を言います。
たとえば、年収300万円で所得控除が100万円だったとしたら200万円に課税所得額を減らすことができます。
一方、税額控除とは、税金そのものを減らしてしまう控除です。
たとえば、もともとの所得税が20万円で税金控除が5万円だったとしたら、15万円を支払うだけで良いということになります。
このように所得控除よりも少ない金額で直接支払う税金が減らせてしまえるのが税額控除なのです。
所得控除と税額控除の違いを知っておくだけでも、次に説明する節税技がより理解できるでしょう。
会社員でも気軽に使える節税技6選
会社員でも気軽に使える節税技はとても多くあります。
具体的には次のものが挙げられます。
- 扶養控除
- 医療費控除
- 生命保険料控除や地震保険料控除
- セルフメディケーション税制
- クレジットカードで支払う※相続税のみ
- ふるさと納税(寄附金控除)
1つ目の扶養控除とは、所得控除による節税方法です。
これは、自分の家族がいると条件をクリアすることによって額の所得控除が受けられます。
その条件とは、簡単に言えば同じ世帯になっている16歳以上19歳未満、23歳以上70歳未満の収入がほとんどない家族です。
アルバイトをしている高校生の子どもがいれば、アルバイトの金額が少ない場合、扶養控除にできますし、専業主婦(夫)の配偶者がいれば対象になります。
このほか、障害や同居の有無など様々な条件で該当する家族もいますが、基本は年齢と収入で対象になるかどうか決まると考えましょう。
2つ目の医療費控除は、配偶者や家族のために支払った医療費が対象の所得控除です。
ただ、支払った全額の医療費が対象になるわけではなく、次のような条件があります。
医療費控除=窓口で支払った医療費の総額-医療保険の保険金が下りた金額-10万円
このように最低年間10万円以上医療機関に支払った金額があることが条件です。
ただ、家族が入院すれば、かなり高い確率で医療費控除の対象になるので、そうなった際には控除を検討してみましょう。
3つ目の生命保険料控除や地震保険料控除は、一年間に支払った生命保険料の一部や地震保険料の一部が所得控除になる制度です。
生命保険料控除は、基本的に年間2万円以上支払っている場合に対象になります。
ただし、8万円を超える支払いに関しては、それ以上支払っても所得控除の上限が4万円なので注意しましょう。
それでも生命保険以外にも介護医療保険料控除や個人年金保険料控除があるので、それらの支払いがある場合は、最大12万円までの所得控除が受けられます。
マイホームがあって地震保険料を支払っている場合は、地震保険料控除を利用しましょう。
これは5万円を上限に所得控除が受けられる節税方法です。
会社には生命保険の支払票のみ提出している方も少なくありませんから、あればこういった保険料の支払票も提出するようにしましょう。
頻繁に薬局やドラッグストアで売薬を購入している方は、4つ目のセルフメディケーション制度も利用できます。
対面で購入できるOTC医薬品(レシートに印が付いていることがほとんどです)を年間12,000円以上購入している場合、上限88,000円まで購入額の合計額分が所得控除されます。
たとえば、風邪薬や胃薬、頭痛薬を年間合計2万円購入している場合は、その2万円がそのまま所得控除になるのが特徴です。
ちなみに2つ目で紹介した医療費控除とセルフメディケーション税制は併用できないため、医療費控除が利用できない場合に検討するようにしましょう。
それと条件として健康診断などを受けていることが挙げられますが、会社の健康診断を受けている方であれば問題ありません。
5つ目はクレジットカードで税金を支払う方法です。
所得税は会社員の場合、源泉徴収されてしまっているので対応できないものの、相続税が発生した場合は上限内であればクレジットカードで支払ができます。
会社に言って自分で確定申告をする形にしたり、あるいは副業分だけ確定申告で税金を支払うといったりといったことは可能です。
6つ目のふるさと納税は、おすすめしたい節税方法です。
これは住民税の税額控除が期待できる節税方法です。
つまり、利用した分のほとんどが支払う住民税が安くなるものになります。
この制度は、希望する自治体にふるさと納税という形で寄付をすることで、その代わりに返礼品と呼ばれる品物が送られてきます。
そのうえで直接住民税が安くなる税額控除が入るので、かなりお得な制度といえるでしょう。
ただし、注意点が2つあります。
それは、上限金額があること、自己負担金があることです。
上限金額は、住民税全額をふるさと納税にできないことで、所得に応じて上限額が設定されています。
たとえば、住民税が15万円だったとしたら、その15万円すべてをふるさと納税にできないということです。
さらに年収900万円の人と年収300万円の人では利用できる上限金額が異なるということも知っておく必要があります。
ただ、上限額については、ふるさと納税のサイトを利用すると上限額のシミュレーションがあるので、それを利用して知ることができます。
そのため、上限ギリギリまで利用したい方はシミュレーションを使ってみましょう。
他にも投資などでも節税できますが、シンプルにできるものとして以上の6つの控除を利用した節税がおすすめです。
意外に知られていない特定支出控除
最後に応用として特定支出控除と呼ばれる制度も節税に利用できます。
これは、自腹を切って業務のための支払を多くしている方にメリットのある制度で、条件を満たせば所得控除が受けられます。
その条件とは給与所得の1/2を超えた場合です。
これは年収によって給与所得額が異なります。
そのため簡単な目安として、年収200万円なら30万円を超えた金額、300万円なら55万円、400万円なら65万円程度、500万円なら75万円程度、600万円なら82万円程度、700万円なら90万円程度を超える場合です。
これらの条件を超える以下の支出があった場合で、会社から手当てが出なかった場合の合計金額が所得控除になります。
- 通勤費用
- 引っ越し費用
- 単身赴任者の帰宅費用
- 資格取得の費用
- 業務の図書の購入費用
- スーツ代
- 個人負担での業務関係のお歳暮代
他にもありますが、以上のような支出があった場合で、手当てが出ず、しかも先ほどのように数十万円以上の支出があった場合に適用されます。
気軽に適用される節税ではありませんが、会社員の特権として認められた節税方法なので知っておきましょう。
まとめ
今回は、会社員でもできる節税対策について解説しました。
一般的な企業の場合、控除について案内があるケースも多いですが、そうでない企業も意外に多くあります。
特にセルフメディケーション制度やふるさと納税制度は、会社員が意外に使っていないものなので、ぜひ検討してみましょう。